10月01日、東京証券取引所の株式売買システムであるarrowheadが故障し、株取引が丸一日できなくなったとのことだ。原因はストレージサーバに搭載しているメモリのハードウェア故障。本来、待機系の機械に切り替わるはずが、設定ミスにより切り替わりができなかったとのこと。
まあ、あるある。
永久に壊れない機械はないので故障は避けられない。避けられないので、壊れたら違う機械に処理を逃がす仕組みを入れている。こういった仕組みをフェイルオーバという。このフェイルオーバは、なぜだか、どれだけ試験をしてもイザというときにキチンと動かない。僕自身、それで過去に何度も痛い目にあった(笑)
さて、そんな東証の障害に対してどこかの議員が「サーバー型ではなくシステムのブロックチェーン化など分散化を進める必要もあると思う。」とツイートしたらしい。
ブロックチェーンとは分散管理台帳技術のひとつ。ビットコインを実現している基礎技術として有名だ。理論的にデータを改ざんすることができないことや、地球が滅びない限り、まず停止することがないといった特徴がある。
そんなツイートへの反応は予想通り炎上していた(笑)
ちょっと技術に詳しい方は知っている話だが、ブロックチェーンは性能が出ない。僕の記憶が正しければデータ更新が完了するまでに10秒くらいかかったはず。一方で、東証で必要な性能は処理あたり1ミリ秒以下だろう。大体、数万とか数十万倍くらい性能が足りないので、東証でブロックチェーンを使うのは荒唐無稽で無茶苦茶な話だ。
それで、国会議員に基本的な技術リテラシーが足りないのはいかがなものか、などという罵詈雑言を書き散らかしてもいいのだけれど、いい大人なのでやめておこう。どちらかというと、このエントリで言いたいことは「これは国会議員だけの話に留まらない」ということだ。
日本の商慣習として、IT開発は、ITを入れたい企業がITを作る専門企業に発注することが多い。ITを入れたい企業のことを「ユーザ企業」、ITを作る専門企業のことを「SIer」(システムインテグレーター)などと呼ぶ。代表的なSIerとしては、NTTデータ、IBM、NEC、それにarrowheadを構築した富士通などがある。
僕自身はユーザ企業に所属しているのだが、このユーザ企業の技術リテラシーは極めて低い。正確に言えば、ユーザ企業にも情報システム部門などがあり、技術リテラシーが高い方はたくさんいる。しかし、そもそも「ITを入れよう!」と企画する事業部門側は、「ブロックチェーン?なにそれ?初耳??」といった動物園状態だ。
そんな動物園状態の部門が「DXを推進するんだ!」などと叫ぶ。
まあことごとく失敗するのは明らかだろう。
じゃあ、事業部門も技術的リテラシーだったり、技術的審美感をつければいいとおもうじゃん。んで、そう言ったら、技術なんて知らなくてもよくて「人間力」が大事なんだそうな。
DXに至る道は険しい。
おわり。